1975年2月、南ベトナム--。日本人商社員?杉本俊夫は、テト(舊正月)でにぎわうサイゴンの町で、祖國を遠く離れた勝手気ままな生活を思う存分楽しんでいた。だが、ある日、杉本は殺人事件を起こしてしまった。ふとした偶然から、現地雇いのベトナム人?フンを殺してしまったのだ。金と力にまかせて自由気ままに他國で振るまっていたこの一人の日本人は、一転して殺人者となってしまった。逃亡者としての杉本に、ベトナムの大地がたちはだかっていた。絶望的な逃亡と、さらに重ねた殺人の末に、杉本は、彼の友人の太田の車を奪い、ベトナムからの脫出を試みた。北端の町?ユエから、徴兵を嫌って國外へ逃亡する若者たちのための密航船が出港する。その密航船に乗り込むのだ。同行するのは、杉本に獻身的な愛を捧げるベトナム人女性?ランと、ベトナム人と日本人の混血の若者?タローである。タローは、かつて自分と母親を捨て、単身、故郷?日本へ帰ってしまった舊日本兵の父親に激しい愛憎の炎を燃やし、父親殺しの旅を夢みていたのだった。折しも、解放戦線の大攻勢が開始され、ベトナム全土には苛烈な戦火が渦まいていた。銃聲や砲聲が轟く戦場に、まるで、捨身の突撃をする如く、杉本の車は一路北へ向かった……。